取引先が倒産してしまった後に、取引先に対して債権を全額回収することは極めて困難な状況ですので考えられる法的な手段を尽くしていくことになります。取引先が破産手続などを開始すれば、破産管財人等から債権者の債権回収行為が否認されることもありますので注意が必要です。
まずは倒産情報の確認を
取引先に関して倒産するという情報を入手した場合、できるだけ早めに取引先を訪問して本当に倒産状態にあるのか事実確認を行いましょう。取引先の倒産について情報を確認せず一方的に取引を打ち切ってしまい、実際には倒産状態になかった場合には打ち切りで生じた損害に対して賠償責任を負う可能性もあります。
強制執行による回収方法
企業が破産の申立などの法的手続が取っていない状況であれば、財産の仮差押えや公正証書による財産の強制執行などを検討することができます。しかし後に破産等の法的手続が取られた場合、強制執行や保全手続は効力を失いますので注意しましょう。
代物弁済による回収方法
取引先が了承すれば、代物弁済という形式を取るために代金の代わりに所有する商品などの譲渡を受けることが可能です。ただしこの代物弁済という方法と取る場合には、書面を作成するなどトラブルにならないようにしておくことが大切です。
売掛金の債権譲渡による回収方法
また、取引先が持っている売掛金等の債権を譲渡してもらうという方法も可能です。債権譲渡には取引先から債権の譲渡を受け、売掛金の相手である会社に確定日付付き債権譲渡通知書を出してもらうことになります。ただしその後取引先が破産した場合や、別の債権者が問題にした時には、その他の債権者と平等性を保つためにせっかく回収したお金や物を戻さなくてはいけなくなる可能性もあります。
債権債務の相殺による回収方法
取引先に対して買掛金など債務負担がある場合には、お互いの債権債務を相殺するという形をとって債権の支払を受けたことと同様の効果を得ることが可能です。相殺通知書は配達証明付内容証明郵便で郵送し、合意書を作成する必要があります。ただし取引先が破産手続開始を決定した後や、支払停止を知った後、さらに破産の申立を知った後に相殺することは原則禁止されているので注意しましょう。
動産売買先取特権による回収方法
動産売買先取特権は動産を売却した人が、動産代金と利息について他の債権者に優先して弁済を受けることが可能になる法定担保物権です。破産手続において別除権として扱われるので、債務者が破産した場合でも破産手続とは別に行使することが可能です。担保権の実行方法は、動産が取引先のところにあるのか、転売されているのかによって法的手続が異なります。いずれにせよ動産売買先取特権は売買関係や納品の証拠が必要となりますので、発注書や受注書、納品書、契約書など書類を管理しておくことが大切です。
取引先が倒産状態にあるとわかったら
取引先が倒産すると全ての債権を回収するということはまず困難です。そのためできるだけ多く回収できるように、上手く先手を打って行く必要があります。取引先が倒産の危機に直面しているなど、その情報が確実なものかを確認してもし本当にそうなら早めに手を打って行くことが大切です。