現経営者が高齢に伴い事業承継を考える時期になったとき、実務の引継ぎをして完了となるわけではなく同時に自社株の引継ぎが必要となります。そこで気になるのは税金のことでしょう。では娘婿に会社を相続させる時に自社株をどのように譲渡していくほうが良いのかこちらではみていきましょう。
■生前に株式を譲渡する場合
親族内承継では現経営者が自社株を後継者に生前贈与という方法があります。年間110万円までが非課税となる暦年贈与や、最大2,500万円までが非課税となる相続時精算課税制度のどちらかを選択する方法がありますが、娘婿は1親等の血族ではありますが、直系ではないことから上記のような贈与の基礎控除や特例の適用を受けることができません。
そのため、贈与によって取得した財産には贈与税の基礎控除や、相続時精算課税ができようできないことから、譲渡によって株式を取得するためには税負担が重くなってしまいます。
■遺贈の場合
贈与税の負担を避けようと、遺言によって自社株を遺す経営者もいらっしゃいますが、遺言によって事業承継する方法は「遺贈」とよばれ相続税が課税されます。娘婿への事業承継ですと通常の事業承継よりも相続税負担が大きくなります。
法定相続人(配偶者・子・親・祖父母・兄弟姉妹)である親族以外への相続には、相続税絵の金額が2割加算されることになっています。このようなことから、娘婿には相続税が2割加算されることになるのです。
■事業承継税制での承継
事業承継税制とは中小企業の経営者が死亡し、その後継者が会社の株式を先代経営者から贈与・相続した場合に、多額の相続税が課税されることにより経営が厳しくなるという社会問題を解決するために創設されました。
事業承継税制は一定の手続きを経ることで事業承継の際の贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度です。中小企業のみ活用できる制度であり「非上場株式等についての相続税猶予及び免除の特例」と「非常所株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」が合わせて事業承継税制と呼ばれています。
この方法を利用すると、娘婿へ事業承継するときに全株式について相続税(贈与税)の全額を納税猶予できます。但し、幾つかの要件を満たす必要がありますので「中小企業庁」のホームページ等で確認をしてください。
■事業承継の対策
これまでの記事で娘婿への相続には税金がかかるうえに、事業承継後も運転資金が必要となってきます。これまで現経営者で成り立っていた会社も経営者が変わることで先の読めない経営になることもあります。そこで娘婿の資金力を確保するために、補助金や融資を利用することも念頭に入れておいたほうが良いでしょう。
◎日本政策金融公庫
日本政策金融公庫では事業の承継に融資する制度があります。この事業承継の融資では、運転資金や設備資金の借り入れが実施でき小規模事業者でしたら7,200万円、最大7憶2,000万円までの融資が可能となっています。金利も1~3%と安心して借り入れできる範囲で設定されています。
◎事業承継補助金
事業承継補助金は、事業転換や経営革新を行う後継者を対象とした補助金になります。支給金額は約100万円~600万円程度になりますが、資金返済が不要である点は大きなメリットといえるでしょう。但し各制度によって様々ですが一般的に条件は厳しいです。
■まとめ
事業承継で娘婿が後継者となる場合は、その後継者が今後の会社経営にしっかりと専念できるよう準備や対策はとりたいものです。