事業を継承する事と承継する事の違いとは?

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事業承継の中で、「継承」と「承継」という2つの言葉が出てくる事があります。
まず「継承」とは、前代の身分や財産、権利、義務などを受継ぐ事で、伝統芸能や王位を継承するといった事で使われる言葉です。
そして「承継」とは、前の代からものを受継ぐことで、権利や伝統を承継するといった使われ方をしています。
どちらも同じ意味にも感じるかもしれませんが、どのような使われ方をするのか理解しておきましょう。

法律用語として正しいのはどっち?
民法では「承継」が使われ、「中小企業経営承継円滑化法」という名称にもあるように法律用語としては承継を使うことが一般的なようです。
税法から見ても、先代の経営者から事業を引継いだ後継者の税負担を緩和する「事業承継税制」という様に「承継」が使われています。
そのため契約書など公文書でも、自社株や経営権を後継者に引渡す意味では「承継」を使う事が正しいと判断できます。

事業承継で次世代に渡すものとは?
事業を次世代に引継ぐために、何のバトンを次世代に渡す事になるのかを確認しておきましょう。ここでも「承継」と「継承」という言葉が出てきます。

・自社株の引継ぎ
後継者が経営権を引継ぐには、社長としての地位以外に会社を支配する事を可能とする数量の自社株が必要です。
業績が良好な会社は自社株の評価も高くなりますので、一度に相続で後継者に引継がせてしまうと相続税の負担が重くなります。そこで株価を適宜引き下げ、ある程度は生前に後継者に移しておく事を検討しましょう。

・経営権の引き継ぎ
円滑な事業承継のためには、後継者を事前に決定して、経営者としての育成や教育が必要です。短期で出来る事ではありませんので、10年など長いスパンを見た上で教育していく事が必要になるでしょう。

・商売の継承
商売を継承する事とは、これまで築いた会社の伝統や社会的信用、取引先との信頼関係、獲得した顧客を受継ぐ事です。目に見えないこの様な財産を後継者に引継ぐ事が出来るか出来ないかで、その後の事業が成功するかが左右されます。

事業承継は十分に計画を立てて実行する事が大切
人的承継には時間が掛かりますし、株式を移転する物的承継もタイミングや対策次第で税金が異なります。
そのため事業承継には十分な時間をかけ、誰に、いつ、どのような方法で行うかを事前に決めておく事が大切です。
万一後継者候補がいなければM&Aという買収を検討する事になるでしょうが、この場合もM&Aの相手がすぐ見つかるわけではない事を理解しておきましょう。