平成29年1月31日、最高裁から節税目的の養子縁組はただちに無効ではないという判決がでましたが、そこだけを見てみると誤解してしまうことになります。確かに養子縁組をすると相続税が減ることもあるのですが、だからといって、孫を何人も養子にすることは、相続税を計算するうえでは認められません。では、今回は孫との養子縁組による相続時のポイントをみてみましょう。
■ポイント①~相続税の2割増~
相続税の2割加算という制度をご存知でしょうか。これは同じ金額の財産を相続する場合でも財産をもらう人によって支払う金額が変わるという制度です。この制度の概要を要約すると【配偶者・子供・親】以外の人が財産を取得した場合には、本来の相続税に2割加算した金額で相続税を支払うといった制度となります。
具体的に2割増の対象者としては【兄弟・甥・姪・内縁関係の妻・友人】などになります。
ここで微妙なのが孫のです。孫が財産を受け取る場合、2割加算になる場合とならない場合があるのです。
◎2割加算される場合
孫の親である子供が健在でありながら、孫が相続する場合は原則として2割加算が適用されます。孫養子は、子供に該当されるため2割加算の対象者とならないようにみえますが、孫の親である子供が健在の場合は、残念ながら孫養子は2割加算の対象となるのです。
◎2割加算されない場合
孫の親である子供が亡くなってしまった場合に、被相続人から見て孫などが相続財産を受け継ぐことを代襲相続といいますが、この場合は孫が相続しても2割加算の対象とはなりません。
■ポイント②~養子縁組規制~
養子縁組をして相続人が増えれば相続税は少なくなります。そのような考えから、多くの人数を養子縁組すれば良いのではという考えに至ると思いますが、昭和63年12月の相続税法の改正により行き過ぎた税負担回避行為としての養子縁組に対応するために、相続税の計算の上では、養子の数に制限が加えられました。
◎被相続人に実の子がいる場合には、養子のうち1人のみを法定相続人の数に含める
◎被相続人に実の子がいない場合には、養子のうち2人までを法定相続人の数に含める
ここで気をつけてもらいたいのが、養子の数を法定相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合の原因となる養子の数は、養子の数に含められないことが国税庁のホームページには記載されています。
そのようなことから、あからさまに節税対策で養子縁組をした孫は、法定相続人として含まれないことを注意してください。
■まとめ
孫を養子にすることで、節税などでメリットになることもありますが、税務署から租税回避行為としてみなされる可能性もあります。養子縁組することに対して節税以外の目的や理由がなければ税務署は認めてくれません。相続を考えて孫を養子としたい場合は専門家と相談のうえ進めていくと良いでしょう。