株主代表訴訟を受け、取締役に善管注意義務違反、忠実義務違反があり、会社に対して損害賠償をしなければならない時でも取締役は賠償責任を免除することができます。
その中の一つ「責任限定契約による責任免除(最低責任限度額)」についてみてみましょう。
【会社法による責任軽減】
取締役の会社に対する損害賠償責任は、原則として株主全員の同意がなければ免除できません。しかし、この原則を貫くと株主代表訴訟などで高額な賠償請求がされるリスクが発生し、それによって事業が倒産したり、経営が萎縮する可能性があります。
その為、会社法では善管注意義務違反、忠実義務違反をした取締役に対しても賠償責任を免除することができるようになっています。
その方法として、株主総会での軽減、取締役会等での軽減、最低責任限度額による軽減があります。
【最低責任限度額】
最低責任限度額とは、下記のようになっています。
・代表取締役・代表執行役
年間の報酬×6
・代表取締約以外の取締役・代表執行役以外の執行役
年間報酬×4
・上記以外の取締役・監査役・会計監査人
年間報酬×2
となっており、最低限度の責任額が決められておりその限度額までの責任は免除されません。
また、日本の株式会社においては社外取締役等が損害倍書せねばならない場面における責任を事前に限定しておく契約のことを「責任限定契約」といいます。
(平成26年の会社法の改正で、取締役については業務執行を行わない社内取締役も対象とされ、監査役は社内外を問わず対象となりました。)
この契約を締結する為には、事前に定款の定めが必要になります。
【過失の程度】
善管注意義務違反、忠実義務違反とありますが、その程度は職務遂行について「善悪かつ重過失がないこと」である必要があります。
つまり、取締役の判断や職務遂行について任務違反であることを認識していた時、悪意がある時や重大な不注意で認識できなかった時などは免除されない、とあります。
【まとめ】
このようにして、取締役や執行役、その他役員は賠償責任を軽減することができます。またあらかじめ社内で最低責任限度額について、きちんと定款を作成しておくことで、無用なトラブルを防ぐこともできるでしょう。
定款の作成等は、法律上の要件を満たす事、後に有益となる文書にする為にも、弁護士などの専門家に相談しながら作成することをお勧めします。